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【船舶工学の基礎|第1章 排水量等の計算】1.4 表面積の計算

船体の水面下にある部分の表面積を浸水面積という。

浸水面積を求めるには、船体表面の傾きを考慮しながら、水に接する面の面積を足し合わせる必要がある。

本記事では、横断面の水面下の長さを求めたうえで、船体全体の浸水面積を計算する方法を考える。

1.4.1 横断面の水面下の長さを求める

船尾垂線A.P.から船首方向への距離を x[m]x[\mathrm{m}]、基線B.L.から鉛直上向きに測った高さを z[m]z[\mathrm{m}]、喫水を d[m]d[\mathrm{m}] とする。

船体中心線から片舷の船側までの半幅を b(x,z)[m]b(x,z)[\mathrm{m}] とする。

ここでは、左右対称の船体を考え、計算対象の片舷の表面を曲面 y=b(x,z)y=b(x,z) で表す。

位置 xx における横断面について、船体の輪郭のうち水面下にある部分の長さを s(x,d)[m]s(x,d)[\mathrm{m}] とすると、次式で求められる。

s(x,d)=2∫0d1+(∂b(x,z)∂z)2dz(1.4-1)s(x,d) = 2\int_{0}^{d} \sqrt{ 1+\left(\frac{\partial b(x,z)}{\partial z}\right)^2 }\,dz \tag{1.4-1}

ここで、∂\partial は偏微分を表す記号である。

∂b(x,z)∂z\frac{\partial b(x,z)}{\partial z} は、船の長さ方向の位置 xx を固定したとき、高さ zz に対して半幅がどの程度変化するかを表す。つまり、横断面の輪郭の傾きを示している。

この傾きを考慮して輪郭に沿った長さを積分し、片舷分を2倍することで、左右両舷を合わせた長さが求められる。

なお、ここで求めるのは水に接する船体の輪郭の長さであり、水面を横切る直線部分は含まない。

1.4.2 船体表面の傾きを考慮して浸水面積を求める

船体表面は、鉛直方向だけでなく、船の長さ方向にも傾いている。

∂b(x,z)∂x\frac{\partial b(x,z)}{\partial x} は、高さ zz を固定したとき、船首尾方向の位置 xx に対して半幅がどの程度変化するかを表す。

両方向の傾きを考慮すると、対象とする船体表面の浸水面積 S(d)[m2]S(d)[\mathrm{m^2}] は、次式で表される。

S(d)=2∫0LPP{∫0d1+(∂b(x,z)∂x)2+(∂b(x,z)∂z)2dz}dx(1.4-2)S(d) = 2\int_{0}^{L_{PP}} \left\{ \int_{0}^{d} \sqrt{ 1+ \left(\frac{\partial b(x,z)}{\partial x}\right)^2+ \left(\frac{\partial b(x,z)}{\partial z}\right)^2 }\,dz \right\}dx \tag{1.4-2}

ここで、LPP[m]L_{PP}[\mathrm{m}] は、船尾垂線A.P.から船首垂線F.P.までの水平距離である垂線間長を表す。

内側の積分で高さ方向の範囲を、外側の積分で船の長さ方向の範囲を足し合わせ、左右両舷の表面積を求めている。

1.4.3 横断面の長さを使った近似計算

式(1.4-2)において、長さ方向の傾きによる項 (∂b(x,z)∂x)2\left(\frac{\partial b(x,z)}{\partial x}\right)^2 の影響が、残りの項に比べて十分に小さい場合は、この項を省略して近似できる。

このとき、浸水面積は次のように表される。

S(d)≃2∫0LPP{∫0d1+(∂b(x,z)∂z)2dz}dx=∫0LPPs(x,d)dx(1.4-3)\begin{aligned} S(d) &\simeq 2\int_{0}^{L_{PP}} \left\{ \int_{0}^{d} \sqrt{ 1+\left(\frac{\partial b(x,z)}{\partial z}\right)^2 }\,dz \right\}dx\\ &= \int_{0}^{L_{PP}}s(x,d)\,dx \end{aligned} \tag{1.4-3}

式(1.4-1)で求めた横断面の長さ s(x,d)s(x,d) に、長さ方向の微小な幅 dx[m]dx[\mathrm{m}] を掛けると、その部分の表面積を近似できる。

これを船の長さ方向に足し合わせることで、船体全体の浸水面積を求める。

ただし、横断面の長さを積分する方法は、長さ方向の傾きの影響を省略した近似である。

1.4.4 浸水面積と船体抵抗の関係

浸水面積は、船体に作用する抵抗を評価するときにも用いられる。

水の密度を ρ[kg/m3]\rho[\mathrm{kg/m^3}]、船速を U[m/s]U[\mathrm{m/s}]、全抵抗係数を CTC_T、全抵抗を RT[N]R_T[\mathrm{N}] とすると、次の関係がある。

RT=12ρU2S(d)CT(1.4-4)R_T = \frac{1}{2}\rho U^2 S(d)C_T \tag{1.4-4}

全抵抗係数 CTC_T は無次元量であり、摩擦抵抗と剰余抵抗に対応する成分を含む。

式(1.4-4)より、水の密度、船速、全抵抗係数が同じであれば、浸水面積が大きいほど全抵抗も大きくなる。

ただし、実際の抵抗は浸水面積だけで決まるわけではない。

船体表面の粗さに関する研究では、異なる塗装面や、生物付着を模擬した粗い表面の試験結果を用いて、同じ船型に対する抵抗の変化を推定している。その結果は、船体表面の状態によっても抵抗が変わることを示している。

したがって、抵抗を考える際には、浸水面積に加えて、船速や船体表面の状態なども考慮する必要がある。

この記事について

参考文献

  • 「これ一冊で船舶工学入門」商船高専キャリア教育研究会 編
  • 「Predicting the Effect of Hull Roughness on Ship Resistance Using a Fully Turbulent Flow Channel」R. Ravenna ほか

(最終閲覧日:2026年10月12日)


※本記事は、上記文献を参考にしつつ、筆者の理解および実務上の知見に基づき整理したものである。


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