OMOGANEYA Technical Academy 〜 重金屋 技術塾 〜
【船舶工学の基礎|第1章 排水量等の計算】1.5 水線面積と浮面心の計算
水面で船体を切った断面の面積を水線面積、その面の図心を浮面心という。
水線面積は、喫水の変化に伴って排水容積がどれだけ増減するかを表す量でもある。本記事では、水線面積と浮面心の求め方を整理し、毎センチ排水トン数や、水の密度が変わったときの喫水変化につなげて考える。
1.5.1 水線面積の計算
船尾垂線A.P.から船首方向への距離を 、基線B.L.から鉛直上向きに測った高さを とする。また、その位置における船体中心線から片舷の船側までの半幅を とする。
ここでは、左右対称の船体が横傾斜せず、基線と水面が平行な状態を考える。喫水を 、船尾垂線A.P.から船首垂線F.P.までの水平距離である垂線間長を とする。
高さ の水平断面を長さ方向に微小な幅 で分けると、その部分の面積は となる。これを船の長さ方向に足し合わせれば、水平断面積 が求められる。
水面の高さ における断面を水線面(waterplane)といい、その面積 を水線面積という。
1.5.2 浮面心の計算
水線面の図心を浮面心(center of flotation)といい、記号 で表す。
船体中心線から横方向への座標を とし、浮面心の座標を とする。
船の長さ方向における浮面心の位置 は、水線面の各微小面積にA.P.からの距離を掛けて足し合わせ、その値を水線面積で割ることで求められる。分子は、A.P.を通る横方向の軸に関する面積一次モーメントである。
左右対称の水線面では、浮面心は船体中心線C.L.上にあり、 となる。
また、船体中央 を基準に、船尾側を正として浮面心の位置を表す場合は、 となる。この値が正なら船体中央より船尾側、負なら船首側に浮面心がある。
浮面心は、船体が揺れたときでも常に水線面内にある。
1.5.3 水線面積と排水量の関係
船体を高さ方向に微小な厚さ で分けると、その部分の容積は となる。これを基線から水面まで積み重ねることで、排水容積 が求められる。
ここからは、排水量を押しのけた水の質量として扱い、 と表す。海水の密度を とし、一定とすると、排水量は次式となる。添字swは海水(seawater)を表す。
喫水が少し増えたときに排水量がどれだけ増えるかを調べるため、式(1.5-4)を喫水 で微分すると、次式が得られる。
左辺の単位は であり、喫水に対する排水量の変化率を表す。同じ密度の水に浮いている場合、水線面積が大きいほど、同じ微小な喫水増加に対する排水量の増加も大きくなる。
1.5.4 毎センチ排水トン数(TPC)
毎センチ排水トン数(TPC:tonnes per centimetre immersion)は、喫水を 変化させるのに相当する排水量の増減を表す。単位は である。
喫水変化の間で水線面積がほぼ一定とみなせる場合、 であることから、式(1.5-5)をセンチメートル当たりの値に換算すればよい。
密度を 、水線面積を で表した数値を使う場合、両者の積を100で割れば、TPCの での数値が得られる。
船が傾かずに平行に沈む場合、TPCは、喫水を約 増やすために追加する質量にも対応する。水線面積が喫水によって変化する船では、TPCも喫水ごとに異なる。
1.5.5 海水から清水へ移ったときの喫水変化
同じ船が、積載量を変えずに海水から清水へ移る場合を考える。静止して浮いている船では、押しのけた水の質量は船の質量に等しいため、排水量 は変わらない。
ただし、清水は海水より密度が小さいため、同じ質量の水を押しのけるには、より大きな排水容積が必要となる。
海水と清水の密度を、それぞれ 、 とする。添字fwは清水(fresh water)を表す。
海水中の排水容積を 、清水中の排水容積を とすると、その差は次のようになる。
海水中と清水中の喫水を、それぞれ 、 とする。姿勢の変化を無視し、喫水変化の間で水線面積 をほぼ一定とみなすと、排水容積の増加は、水線面積と喫水増加の積で近似できる。
を 、密度を 、水線面積を で表せば、この式による喫水差は で求まる。
さらに、海水中のTPCを使って、喫水増加量 を で求めると、次式となる。
ここでは を 、TPCを で表す。密度の比は無次元であるため、右辺の単位は となる。
例えば、海水の密度を 、清水の密度を とすると、密度の差と清水密度の比は0.025となる。この条件では、排水量をTPCで割った値の0.025倍が、センチメートルで表した喫水増加量の近似値となる。
1.5.6 船体形状を用いた数値計算
船体の傾きを含めた計算では、船体形状と水面の交わりから、その姿勢における水線面を求める方法が研究されている。船体を三次元の曲面で表し、喫水・横傾斜・縦傾斜に応じて水面との交点を求め、水線面積や浮面心の前後位置などを計算するものである。
また、船体の形状変化に合わせて断面の配置を調整し、少ない断面数で形状を再現する方法も検討されている。比較計算では、断面を等間隔に配置する方法に対して、計算精度を保ちながら必要な断面数を減らせる例が示されている。
この記事について
参考文献
- 「これ一冊で船舶工学入門」商船高専キャリア教育研究会 編
- 「A Quasi-Bonjean Method for Computing Performance Elements of Ships Under Arbitrary Attitudes」 Kaige Zhu、Jiao Liu、Yuanqiang Zhang
参考資料
- Transport Canada「TP 14609 – Study Guide for Applicants to the Fourth-class Engineer Certificate with STCW Endorsement」
(最終閲覧日:2026年10月18日)
※本記事は、上記文献を参考にしつつ、筆者の理解および実務上の知見に基づき整理したものである。
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