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【船舶工学の基礎|第1章 排水量等の計算】1.3 排水容積と排水量の計算

船の排水量を求めるためには、まず、水面下にある船体の容積を求める必要がある。

船体の各位置における水面下の横断面積が分かれば、その面積を船の長さ方向に積み重ねることで、船体全体の水面下の容積を求めることができる。

本記事では、横断面積から排水容積を求め、排水量を計算する方法を考える。

横断面積から排水容積を求める

船尾垂線A.P.から船首方向への距離を x[m]x[\mathrm{m}]、喫水を d[m]d[\mathrm{m}] とし、その位置で水面下にある船体の横断面積を A(x,d)[m2]A(x,d)[\mathrm{m^2}] とする。

船体を長さ方向に微小な幅 dx[m]dx[\mathrm{m}] で分けると、その部分の水面下の容積は A(x,d)dx[m3]A(x,d)\,dx[\mathrm{m^3}] で表される。

これを船尾垂線A.P.から船首垂線F.P.まで足し合わせると、喫水 d[m]d[\mathrm{m}] における排水容積 ∇(d)[m3]\nabla(d)[\mathrm{m^3}] が求められる。

∇(d)=∫0LPPA(x,d)dx(1.3–1)\nabla(d)=\int_{0}^{L_{PP}}A(x,d)\,dx \quad (1.3\text{-}1)



ここで、LPP[m]L_{PP}[\mathrm{m}] は、船尾垂線A.P.から船首垂線F.P.までの水平距離である垂線間長を表す。

ここでは、水面下の船体が船尾垂線A.P.から船首垂線F.P.までの範囲に収まるものとして考える。
この範囲外にも水面下の部分がある場合は、その容積を加える必要がある。

船体中心線から片舷の船側までの幅を b(x,z)[m]b(x,z)[\mathrm{m}] とし、基線から鉛直上向きに測った高さを z[m]z[\mathrm{m}] とする。
左右対称の船体として横断面積を表せば、排水容積は次のようにも書ける。

∇(d)=∫0LPPA(x,d)dx=2∫0LPP{∫0db(x,z)dz}dx(1.3–2)\begin{aligned} \nabla(d) &=\int_{0}^{L_{PP}}A(x,d)\,dx\\ &=2\int_{0}^{L_{PP}}\left\{\int_{0}^{d}b(x,z)\,dz\right\}dx \end{aligned} \quad (1.3\text{-}2)



内側の積分で各位置の水面下の横断面積を求め、外側の積分でその面積を船の長さ方向に積み重ねる。
排水容積 ∇\nabla の単位は、通常 [m3][\mathrm{m^3}] である。

Fig.1.3-1 Method for Calculating Displacement Volume from Cross-Sectional Areas

図1.3-1 横断面積から排水容積を求める方法

排水容積と排水量の関係

船が水面に浮いているとき、水面下にある船体は、その容積と同じ体積の水を押しのけている。
したがって、排水容積 ∇[m3]\nabla[\mathrm{m^3}] は、船が押しのけた水の体積でもある。

海水の密度を ρsw[kg/m3]\rho_{sw}[\mathrm{kg/m^3}]、重力加速度を g[m/s2]g[\mathrm{m/s^2}]、海水の比重量を γsw[N/m3]\gamma_{sw}[\mathrm{N/m^3}] とすると、下記の通りになる。

γsw=ρswg(1.3–3)\gamma_{sw}=\rho_{sw}g \quad (1.3\text{-}3)



押しのけた海水の重さを Δ[N]\Delta[\mathrm{N}] と表せば、次式が成り立つ。

Δ=ρsw∇g=γsw∇(1.3–4)\Delta=\rho_{sw}\nabla g=\gamma_{sw}\nabla \quad (1.3\text{-}4)


これは、排水容積に相当する海水の重さである。

アルキメデスの原理より、船体に働く浮力 FB[N]F_B[\mathrm{N}] の大きさは、船が押しのけた海水の重さに等しい。

FB=Δ(1.3–5)F_B=\Delta \quad (1.3\text{-}5)



浮いている船の重量

船が静止して浮いているとき、船体に働く上向きの浮力 FB[N]F_B[\mathrm{N}] と、下向きの船の重量 W[N]W[\mathrm{N}] は釣り合っている。

W=FB(1.3–6)W=F_B \quad (1.3\text{-}6)


また、FB=ΔF_B=\Delta であるため、下記の通りとなる。

W=FB=Δ(1.3–7)W=F_B=\Delta \quad (1.3\text{-}7)


つまり、浮いている船の重量は、その船が押しのけた海水の重さに等しい。

船の重量を直接測定することは困難である。しかし、船体の形状が分かっていれば、喫水から排水容積を求め、押しのけた水の重さを計算することによって、船の重量を求められる。

排水量の単位について

ここまでの Δ=ρsw∇g\Delta=\rho_{sw}\nabla g は、押しのけた水に働く重力の大きさを表している。
ρsw\rho_{sw} を kg/m3\mathrm{kg/m^3}、∇\nabla を m3\mathrm{m^3}、gg を m/s2\mathrm{m/s^2} で表すと、Δ\Delta の単位は N\mathrm{N} となる。

一方、船の排水量を t\mathrm{t} で表す場合は、押しのけた水の質量を示している。
この場合、密度を t/m3\mathrm{t/m^3} で表せば、計算式は次のようになる。

排水量[t]=ρsw[t/m3]×∇[m3](1.3–8)\text{排水量}\;[\mathrm{t}] =\rho_{sw}\;[\mathrm{t/m^3}] \times\nabla\;[\mathrm{m^3}] \quad (1.3\text{-}8)



このように、同じ「排水量」という言葉でも、式を読む際には重さを力として表しているのか、質量として表しているのかを単位で確認する必要がある。

まとめ

船の排水容積は、水面下の横断面積を長さ方向に積み重ねることで求められる。

船が静止して浮いているとき、アルキメデスの原理により、浮力は排水容積に相当する水の重さに等しく、その大きさは船の重量と釣り合う。

したがって、船体形状と喫水から排水容積を求めることが、排水量と船の重量を求める出発点となる。

この記事について

参考文献
・「これ一冊で船舶工学入門」商船高専キャリア教育研究会 編


※本記事は、上記文献を参考にしつつ、筆者の理解に基づき整理したものである。


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