OMOGANEYA Technical Academy 〜 重金屋 技術塾 〜

技術アカデミー

【船舶工学の基礎|第1章 排水量等の計算】1.2 アルキメデスの原理

船が水に浮いているとき、船体には下向きの重量と、水から受ける上向きの力が働いている。
この上向きの力を浮力という。

浮力が生じる理由を水中の圧力から確認したうえで、船が浮く条件を考える。

水中の立方体に働く力

水中に、一辺の長さが a[m]a[\mathrm{m}] の小さな立方体を置く。
上面の水深を h′[m]h'[\mathrm{m}]、下面の水深を (h′+a)[m](h’+a)[\mathrm{m}] とする。
また、水の密度を ρ[kg/m3]\rho[\mathrm{kg/m^3}]、重力加速度を g[m/s2]g[\mathrm{m/s^2}]、水面に作用する圧力を p0[Pa]p_0[\mathrm{Pa}] とする。



上面の圧力 p(h′)[Pa]p(h’)[\mathrm{Pa}] と、下面の圧力 p(h′+a)[Pa]p(h’+a)[\mathrm{Pa}] は、それぞれ次のように表される。

p(h′)=ρgh′+p0p(h′+a)=ρg(h′+a)+p0(1.2–1)\begin{aligned} p(h’)&=\rho gh’+p_0\\ p(h’+a)&=\rho g(h’+a)+p_0 \quad (1.2\text{-}1) \end{aligned}



上面と下面の面積はいずれも a2[m2]a^2[\mathrm{m^2}] である。
上面には下向き、下面には上向きに水圧による力が働くため、上下方向の力の差である浮力 FB[N]F_B[\mathrm{N}] は、次のようになる。

FB=p(h′+a)a2−p(h′)a2={p(h′+a)−p(h′)}a2={ρg(h′+a)+p0−(ρgh′+p0)}a2=ρga⋅a2=ρga3(1.2–2)\begin{aligned} F_B &= p(h’+a)a^2-p(h’)a^2 =\{p(h’+a)-p(h’)\}a^2\\ &=\{\rho g(h’+a)+p_0-(\rho gh’+p_0)\}a^2 =\rho ga\cdot a^2\\ &=\rho ga^3 \qquad (1.2\text{-}2) \end{aligned}



ここで、立方体の体積を V[m3]V[\mathrm{m^3}] とすると、式(1.2-2)は次のように表すことができる。

FB=ρVg(1.2–3)F_B=\rho Vg \quad (1.2\text{-}3)


したがって、浮力は、流体の密度 ρ[kg/m3]\rho[\mathrm{kg/m^3}]、物体が押しのけた流体の体積 V[m3]V[\mathrm{m^3}]、重力加速度 g[m/s2]g[\mathrm{m/s^2}] の積で表される。


上面と下面の圧力差を取ると、両者に共通する圧力 p0p_0 と、水深 h′h’ による圧力 ρgh′\rho gh’ は相殺される。

つまり、浮力を生み出すのは全体に共通して作用する圧力ではなく、上面と下面の水深の違いによって生じる圧力差 ρga\rho ga であることが分かる。

なお、水面が大気に開放されている場合、p0p_0 は大気圧である。

図1.2-1 水中の立方体に働く力

図1.2-1 水中の立方体に働く力

面の角度と水中の圧力

立方体の上面と下面では、水深の違いによって圧力差が生じた。
次に、水中の一点における圧力を、微小な三角柱の力の釣り合いから考える。

静止した水中の一点を含む、十分に小さな三角柱ABCを考える。
AB面、AC面、BC面に働く圧力を、それぞれ p1[Pa]p_1[\mathrm{Pa}]、p2[Pa]p_2[\mathrm{Pa}]、p3[Pa]p_3[\mathrm{Pa}] とする。
また、三角柱の奥行きを単位長さ 1[m]1[\mathrm{m}] とし、AC面とAB面のなす角度を θ\theta とする。

図1.2-2 面の角度と水中の圧力

図1.2-2 面の角度と水中の圧力

まず、水平方向に働く力は次のように釣り合う。

p1⋅(AB面の面積)=p2cos⁡θ⋅(AC面の面積)(1.2–4)p_1\cdot(\text{AB面の面積}) = p_2\cos\theta\cdot(\text{AC面の面積}) \quad (1.2\text{-}4)


AB面の面積は、AC面の面積に cos⁡θ\cos\theta を掛けたものと等しい。
したがって、下記の通りとなる。

p1=p2(1.2–5)p_1 = p_2 \quad (1.2\text{-}5)


次に、鉛直方向に働く力を考える。
水の比重量を γ[N/m3]\gamma[\mathrm{N/m^3}]、三角形ABCの辺の長さをそれぞれ AB[m]AB[\mathrm{m}]、BC[m]BC[\mathrm{m}]、AC[m]AC[\mathrm{m}] とする。

三角柱の体積は、三角形ABCの面積に奥行き 1[m]1[\mathrm{m}] を掛けたものである。
したがって、三角柱内の水の重さは 12AB⋅BC⋅1⋅γ[N]\frac{1}{2}AB\cdot BC\cdot1\cdot\gamma[\mathrm{N}] である。

水の重さも含めた鉛直方向の釣り合いは、次式で表される。

p3⋅(BC面の面積)=p2sin⁡θ⋅(AC面の面積)+12AB⋅BC⋅1⋅γ(1.2–6)\begin{aligned} p_3\cdot(\text{BC面の面積}) &=p_2\sin\theta\cdot(\text{AC面の面積})\\ &\quad+\frac{1}{2}AB\cdot BC\cdot1\cdot\gamma \quad (1.2\text{-}6) \end{aligned}



三角柱を十分に小さくすると、ABとBCはともに微小となるため、その積は AB⋅BC≒0AB\cdot BC\fallingdotseq0 とみなすことができる。
このため、三角柱内の水の重さを表す 12AB⋅BC⋅1⋅γ\frac{1}{2}AB\cdot BC\cdot1\cdot\gamma は、各面に働く水圧による力と比べて十分に小さく、無視することができる。

したがって、下記の通りとなる。

p3⋅(BC面の面積)=p2sin⁡θ⋅(AC面の面積)(1.2–7)p_3\cdot(\text{BC面の面積}) = p_2\sin\theta\cdot(\text{AC面の面積}) \quad (1.2\text{-}7)


BC面の面積は、AC面の面積に sin⁡θ\sin\theta を掛けたものと等しいため、下記が得られる。

p3=p2(1.2–8)p_3 = p_2 \quad (1.2\text{-}8)


水平方向の釣り合いから p1=p2p_1=p_2 、鉛直方向の釣り合いから p3=p2p_3=p_2 なので、下記の通りとなる。


p1=p2=p3(1.2–9)p_1 = p_2 = p_3 \quad (1.2\text{-}9)



つまり、静止した水中の同じ一点における圧力の大きさは、面の向きによらない(圧力の等方性)。
流体内の任意の点において、圧力が全方向に等しく働く性質はパスカルの原理に基づいている。

この性質があるからこそ、船体のように複雑な曲面であっても、各面に垂直に働く水圧を個別に考えることができる。

これは、水深が異なっても圧力が等しいという意味ではない。
立方体の上面と下面では水深が異なるため、圧力差が生じる。
三角柱で確認したのは、同じ一点で面の向きだけを変えた場合の圧力の性質である。


水中の微小部分から物体全体へ

立方体に限らず、流体中の物体を、幅 Δx[m]\Delta x[\mathrm{m}]、奥行き Δy[m]\Delta y[\mathrm{m}]、高さ Δz[m]\Delta z[\mathrm{m}] の微小な部分に分けて考える。
微小部分の上面と下面の面積は ΔxΔy[m2]\Delta x\Delta y[\mathrm{m^2}]、水深の差は Δz[m]\Delta z[\mathrm{m}] である。

したがって、上面と下面に働く水圧による力の差 ΔFB[N]\Delta F_B[\mathrm{N}] は、次のようになる。

ΔFB=ρgΔzΔxΔy=ρgΔV(1.2–10)\begin{aligned} \Delta F_B &=\rho g\Delta z\,\Delta x\Delta y\\ &=\rho g\Delta V \quad (1.2\text{-}10) \end{aligned}



ここで、ΔV=ΔxΔyΔz[m3]\Delta V=\Delta x\Delta y\Delta z[\mathrm{m^3}] は微小部分の体積である。
物体全体に働く浮力を求めるためには、それぞれの微小部分に働く浮力 ΔFB[N]\Delta F_B[\mathrm{N}] を、水中にある部分全体について足し合わせればよい。


物体の分割を限りなく細かくすると、微小体積 ΔV\Delta V による総和は、微小体積 dV[m3]dV[\mathrm{m^3}] についての積分として表すことができる。
したがって、物体全体に働く浮力 FB[N]F_B[\mathrm{N}] は、次式で表される。

FB=∫VρgdV=ρg∫VdV=ρVg(1.2–11)F_B =\int_V \rho g\,dV =\rho g\int_V dV =\rho Vg \quad (1.2\text{-}11)


V[m3]V[\mathrm{m^3}] は、物体が押しのけた水の体積である。
この式は、立方体だけでなく、任意の形状をした物体についても、浮力の大きさが押しのけた水の重さと等しいことを示している。

これがアルキメデスの原理である。

図1.2-3 水中の物体を微小部分に分けて考える方法

図1.2-3 水中の物体を微小部分に分けて考える方法

浮力と物体の重量

物体に働く下向きの重量を W[N]W[\mathrm{N}]、上向きの浮力を FB[N]F_B[\mathrm{N}] とする。
両者の大小関係によって、物体が浮上するか、釣り合うか、沈下するかが決まる。

重量より浮力が大きい場合



W<FB(1.2–12)W < F_B \quad (1.2\text{-}12)



浮力が重量より大きい物体は浮上する。
物体の一部が水面から出ると、水中にある部分の体積 V[m3][\mathrm{m^3}] が小さくなり、浮力 FB[N]F_B[\mathrm{N}] も減少する。

やがて重量 W[N]W[\mathrm{N}] と浮力 FB[N]F_B[\mathrm{N}] が等しくなると、物体は水面に浮いた状態で釣り合う。
船が浮いているのもこの状態である。

重量と浮力が等しい場合



W=FB(1.2–13)W = F_B \quad (1.2\text{-}13)



物体が水中にあり、重量 W[N]W[\mathrm{N}] と浮力 FB[N]F_B[\mathrm{N}] が等しい場合は、浮上も沈下もせず釣り合う。
この状態を中性浮力という。

潜水艇や潜水艦は、バラストを調整して中性浮力の状態をつくる。

また、水面に浮いて静止している船も、重量 W[N]W[\mathrm{N}] と浮力 FB[N]F_B[\mathrm{N}] が等しい状態にある。
ただし船の場合は、水面下にある部分の体積に応じた浮力で釣り合っている。

重量より浮力が小さい場合



W>FB(1.2–14)W > F_B \quad (1.2\text{-}14)



重量が浮力より大きい物体は沈下する。ただし、沈下中も物体には浮力が働いている。

船の排水量との関係

静止して浮いている船では、船の重量 W[N]W[\mathrm{N}] と浮力 FB[N]F_B[\mathrm{N}] が釣り合う。
また、アルキメデスの原理より、浮力は船が押しのけた水の重さに等しい。

船が押しのけた水の体積 V[m3]V[\mathrm{m^3}] を排水容積という。
したがって、船の水面下にある部分の容積を求めれば、船が押しのけた水の量を求めることができる。

次回の「1.3 排水容積と排水量の計算」では、1.1で求めた断面積を使い、排水容積から排水量を計算する。

この記事について

参考文献
・「これ一冊で船舶工学入門」商船高専キャリア教育研究会 編
・「船舶幾何学 造船設計の基礎知識」慎 燦益 著


※本記事は、上記文献を参考にしつつ、筆者の理解に基づき整理したものである。

この記事を書いた企業

企業名
株式会社マリンテクノサービス
事業内容
・船舶用機械・機器の輸出入
・再生可能エネルギー関連事業
・産業機器・製品の調達・販売
・OMOGANEYAの運営
URL
https://marinetechno.jp/
連絡先
info-jp@marinetechno.jp
企業ページを見る
contact

製品・サービスの掲載、掲載情報に関するお問い合わせ、OMOGANEYAを通じた調達・販売・取引支援について、お気軽にご相談ください。