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【第1部|電力市場】1.2 卸電力市場とは
一般社団法人日本卸電力取引所(JEPX)では、取引会員が売り入札または買い入札を行い、電気を売買する。
このような事業者間の電力取引を行う市場が卸電力市場である。
1.2.1 卸電力市場とは
卸電力市場では、実際に発電・供給される電力量であるkWh価値を取引する。日本では、JEPXが卸電力取引市場を開設・運営している。
JEPXにおける電力取引は、電気の受け渡しを伴う実物取引である。取引に参加するには、JEPXの取引会員になる必要がある。
1.2.2 JEPXの役割
JEPXは、売り手と買い手の間に入り、入札の受付、約定処理、取引結果の通知および代金の決済を行う。
翌日取引では、取引相手は匿名とされ、JEPXが取引当事者間を仲介する。売り手と買い手が提示した価格と量にもとづいて約定価格と約定量が決定される。
1.2.3 卸電力市場の主な種類
JEPXでは、受渡時期や取引目的に応じて複数の市場が設けられている。主要市場は一日前市場(スポット市場)であり、その後の調整市場として当日市場(時間前市場)が設けられている。
表1.2-1 JEPXにおける主な電力取引
| 市場 | 主な内容 |
| 一日前市場(スポット市場) | 翌日に受け渡す電気を、30分単位の48商品に分けて取引する |
| 当日市場(時間前市場) | スポット市場後に生じた発電不調や需要変化などによる需給のずれに対応する |
| 先渡市場 | 1年間、1か月間または1週間を通じて受け渡す電気を取引する |
| ベースロード市場 | 1年間または2年間を通じて受け渡す電気を取引する |
スポット市場では、他の参加者の入札状況が見えない状態で入札し、すべての約定に共通の価格を適用するブラインド・シングルプライスオークションが採用されている。
時間前市場では、スポット市場で翌日分を取引した後、実際の受け渡しまでに生じる需給のずれを調整する。売りと買いの条件が合うとその都度約定するザラバ方式が採用されている。
1.2.4 スポット市場における価格の決まり方
スポット市場では、30分単位の商品ごとに売り入札と買い入札が集められる。JEPXは、売り入札を合成した供給曲線と、買い入札を合成した需要曲線の交点から約定価格と約定量を決定する。
約定した売り手と買い手には、原則として入札価格ではなく、決定された共通の約定価格が適用される。
連系線の制約と市場分断
全国の入札を合成した約定結果に対して、地域間連系線で送電できる容量が不足する場合は、連系線の制約を考慮して約定計算が分けられる。これを市場分断という。
市場分断が発生すると、分断された市場ごとに約定価格が計算されるため、エリアによって価格が異なる場合がある。この価格をエリアプライスという。
1.2.5 約定後の電気の受け渡し
スポット市場で電気を売却した事業者は、約定した量を販売計画に登録する。購入した事業者は、同じ量を調達計画に登録する。
約定した電気は電力ネットワークを通じて受け渡され、JEPXを通じて売買代金が決済される。このため、卸電力市場での取引は、入札と金銭の決済だけでなく、販売計画・調達計画および実際の受け渡しと結び付いている。
1.2.6 容量市場との違い
卸電力市場と容量市場では、取引する価値と対象時期が異なる。
表1.2-2 卸電力市場と容量市場の違い
| 項目 | 卸電力市場 | 容量市場 |
| 取引する価値 | 電力量(kWh価値) | 供給力(kW価値) |
| 主な対象 | 実際に発電・供給される電気 | 将来、電力を供給できる能力 |
| 主な役割 | 実際に受け渡す電気の売買 | 将来必要となる供給力の確保 |
卸電力市場は実際に受け渡す電気を取引する市場であり、容量市場は将来の供給力をあらかじめ確保する市場である。
まとめ
卸電力市場は、取引会員が実際に受け渡す電力量(kWh価値)を取引する市場である。日本ではJEPXが取引市場を運営し、スポット市場を主要市場とし、その後の時間前市場で需給のずれを調整する。
取引では、入札にもとづいて価格と量が決定され、約定結果は販売計画や調達計画に反映される。スポット市場では、連系線の制約によって市場分断が発生し、エリアごとに異なる価格が形成される場合もある。
この記事について
参考資料
- 一般社団法人日本卸電力取引所「取引概要」
- 一般社団法人日本卸電力取引所「日本卸電力取引所 取引ガイド」
- 一般社団法人日本卸電力取引所「取引規程」
- 一般社団法人日本卸電力取引所「取引会員情報」
- 資源エネルギー庁「エネルギー動向(2025年6月版) 第1章 第4節 二次エネルギーの動向」
- 電力広域的運営推進機関「容量市場について」
(最終閲覧日:2026年10月15日)
※本記事は、上記資料を参考にしつつ、筆者の理解に基づき整理したものである。
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