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電気・電子シリーズ 番外編|第6回 系統用蓄電池の役割と基本構成
再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、電力の需要と供給のバランスを調整する設備として、系統用蓄電池の導入が進められている。
系統用蓄電池は、電力系統に接続して電気を充電・放電することにより、需給バランスの調整、再生可能エネルギーの出力変動への対応、周波数調整などに利用される蓄電設備である。
本記事では、系統用蓄電池の主な役割と基本的な構成について説明する。
系統用蓄電池とは
系統用蓄電池とは、電力系統に直接接続され、必要に応じて電気を充電または放電する蓄電設備である。
電力の需要が少ない時間帯や発電量が多い時間帯に充電し、需要が多い時間帯や発電量が不足する時間帯に放電することで、電力の需要と供給のバランスを調整できる。
一般に、蓄電池を利用した電力貯蔵システムは、Battery Energy Storage System(BESS)と呼ばれる。
系統用蓄電池は蓄電池だけで構成されるものではなく、電力を変換するPCS、蓄電池を監視するBMS、設備全体を制御するEMS、変圧器、空調設備、消火設備などを組み合わせたシステムである。
系統用蓄電池の主な役割
電力の需要と供給の調整
電力系統では、発電量と消費量を常に一致させる必要がある。
系統用蓄電池は、電力が余っているときに充電し、不足しているときに放電することで、電力の需要と供給のバランスを調整する。
電力需要の少ない時間帯に充電し、需要の多い時間帯に放電する運用は、ピークシフトなどに利用される。
再生可能エネルギーの出力変動への対応
太陽光発電や風力発電の発電量は、日射量や風況などによって変動する。
系統用蓄電池を組み合わせることで、発電量が多いときには余剰電力を充電し、発電量が低下したときには放電できる。
これにより、再生可能エネルギーの出力変動を補い、電力系統へ供給する電力を調整できる。
周波数の調整
電力系統の周波数は、発電量と消費量のバランスによって変化する。
電力が不足すると周波数は低下し、電力が余ると周波数は上昇する。
系統用蓄電池は、PCSを通じて充放電出力を速やかに変化させられるため、周波数の変動に対応する調整力として利用できる。
電圧の調整
系統用蓄電池に使用されるPCSには、有効電力の充放電だけでなく、無効電力を制御できるものがある。
無効電力を系統へ供給または系統から吸収することで、連系点付近の電圧を調整できる。
一方、系統用蓄電池は有効電力を短時間で大きく変化させることができるため、系統の強さ、送電線や配電線のインピーダンス、連系点の位置などによっては、その充放電が連系点の電圧へ影響する場合がある。
そのため、系統連系にあたっては、潮流計算や系統解析によって電圧への影響を確認し、必要に応じてPCSによる無効電力制御や出力変化速度の制限などを検討する。
PCSだけでは必要な無効電力を確保できない場合には、SVC(Static Var Compensator:静止型無効電力補償装置)やSTATCOM(Static Synchronous Compensator:自励式無効電力補償装置)などを設置することがある。
ただし、必要となる対策は系統条件やPCSの仕様によって異なり、すべての系統用蓄電池にSVCやSTATCOMが必要になるわけではない。
系統用蓄電池の基本構成
系統用蓄電池は、主に次の設備によって構成される。
・蓄電池
・BMS
・PCS
・EMS
・変圧器および受変電設備
・空調設備
・消火設備
・監視制御設備
蓄電池
蓄電池は、電気エネルギーを化学エネルギーとして蓄え、必要なときに再び電気エネルギーとして取り出す設備である。
蓄電池セルを複数接続してモジュールを構成し、さらにモジュールを組み合わせてラックや蓄電池システムを構成する。
系統用蓄電池には、エネルギー密度、充放電効率および応答性能などの特徴から、リチウムイオン電池が広く使用されている。
BMS
BMS(Battery Management System)は、蓄電池の状態を監視し、安全な範囲で充電および放電を行うための管理装置である。
主に、各セルやモジュールの電圧、電流、温度、充電状態などを監視する。
また、過充電、過放電、過電流、異常な温度上昇などを防止し、蓄電池を保護する役割を持つ。
パワーコンディショナ(PCS)
パワーコンディショナ(PCS:Power Conversion System)は、蓄電池と電力系統の間で電力を変換する装置である。
蓄電池は直流電力を充放電するのに対して、一般的な電力系統では交流電力が使用される。
そのため、充電時には系統側の交流電力を直流電力へ変換し、放電時には蓄電池側の直流電力を交流電力へ変換する。
PCSは有効電力の充放電を制御するほか、機種や運転条件によっては、無効電力の供給または吸収によって電圧調整を行う。
EMS
EMS(Energy Management System)は、系統用蓄電池全体の運転を管理するシステムである。
電力系統の状態、充放電の指令、蓄電池の充電状態などに基づいて、PCSへ充電または放電の指令を出す。
また、BMSやPCSから取得した情報を監視し、蓄電池設備全体の運転を調整する。
系統用蓄電池を電力市場や需給調整市場などで運用する場合には、EMSだけでなく、複数の蓄電池などをまとめて制御し、電力取引や需給調整を行うアグリゲーターとの連携も重要となる。
EMSは、アグリゲーターから受け取った充放電指令に基づき、BMSから取得した蓄電池の状態やPCSの運転可能範囲を考慮して、設備を制御する。
なお、蓄電池、PCSおよびEMSは、メーカーや製品によって通信方式、制御方法、取得できる情報などが異なる。
そのため、蓄電池メーカーやPCSメーカーとの組合せがあらかじめ確認されていないEMSを使用する場合には、機器間の通信、制御指令および保護動作などに関する接続・組合せ試験が必要になる場合がある。
変圧器および受変電設備
PCSから出力される交流電力の電圧は、そのままでは連系する電力系統の電圧と一致しないことがある。
そのため、変圧器によってPCSの出力電圧を連系電圧まで昇圧し、遮断器や断路器などを備えた受変電設備を通して電力系統へ接続する。
日本国内において、高圧で電力系統へ連系する系統用蓄電池では、PCSの出力電圧を6.6kVへ昇圧する変圧器を用いるのが一般的な構成である。
空調設備と消火設備
蓄電池の性能や劣化速度は、周囲温度やセル温度の影響を受ける。
そのため、コンテナなどに設置される系統用蓄電池には、適切な温度を維持するための空調設備(HVAC)が設けられる。
また、蓄電池の異常発熱や火災に備えて、火災検知設備、警報設備および消火設備などが設けられる。
監視制御設備
系統用蓄電池では、BMS、PCS、EMS、空調設備および受変電設備などの運転状態や異常情報を監視する。
大規模な設備では、これらの情報を収集・記録し、遠隔監視や操作を行うために、SCADA(Supervisory Control and Data Acquisition)が使用される場合がある。
系統用蓄電池では、これらの設備を敷地内に配置し、PCS、昇圧用変圧器および受変電設備を介して電力系統へ接続する。
系統用蓄電池と電力系統の関係
系統用蓄電池は、高速な充放電によって需給調整や周波数調整に利用できる一方、その運転が電力系統の電圧や潮流に影響を与える場合がある。
特に、連系する系統の短絡容量が小さい場合や、連系点までのインピーダンスが大きい場合には、有効電力および無効電力の変化による電圧への影響を考慮する必要がある。
したがって、系統用蓄電池の導入では、蓄電池容量とPCS容量だけでなく、連系点の系統条件、必要な無効電力、出力変化速度、変圧器容量および保護制御方式などを含めて検討する必要がある。
この記事について
参考文献
・“Battery Energy Storage System Performance in Providing Various Electricity Market Services,” Hussein Jaffal et al., Batteries, Vol. 10, No. 3, 2024.
・“A Guide to the Integration and Utilization of Energy Storage Systems with a Focus on Demand Resource Management and Power Quality Enhancement,” Ahmed G. Abo-Khalil and Mohammad Alobaid, Sustainability, Vol. 15, No. 20, 2023.
・“Impact Analysis of a Battery Energy Storage System Connected in Parallel to a Wind Farm,” Nicolau K. L. et al., Energies, Vol. 15, No. 13, 2022.
(最終閲覧:2026年9月12日)
※本記事は、上記文献を参考にしつつ、筆者の理解および実務上の知見に基づき整理したものである。
この記事を書いた企業
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