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【電気の基礎|第1章 直流回路】1.13 導体・半導体・絶縁体

物質は、電流の流れやすさによって、導体、半導体、絶縁体に分類できる。

導体は電流が流れやすく、絶縁体は電流が流れにくい。

半導体は、導体と絶縁体の中間的な電気的性質を持つ物質である。

これらの違いは、材料の電気抵抗率だけでなく、物質内部における電子のエネルギー状態を表すエネルギーバンドによって説明できる。

本記事では、導体・半導体・絶縁体の基本的な違いを、電気抵抗率とエネルギーバンドの観点から解説する。

1.13.1 電気抵抗率による分類

物質の電流の流れにくさは、電気抵抗によって表される。

ただし、電気抵抗は、材料の種類だけでなく、導体の長さや断面積によっても変化する。

材料そのものの電流の流れにくさを比較する場合には、電気抵抗率を用いる。

電気抵抗RRは、電気抵抗率ρ\rho、導体の長さll、断面積AAを用いて、次式で表される。

R=ρlA(1.13-1)R=\rho\frac{l}{A} \tag{1.13-1}

R:電気抵抗 [Ω]ρ:電気抵抗率 [Ω⋅m]l:導体の長さ [m]A:導体の断面積 [m2]\begin{aligned} R &: \text{電気抵抗}\ [\Omega] \\ \rho &: \text{電気抵抗率}\ [\Omega\cdot\mathrm{m}] \\ l &: \text{導体の長さ}\ [\mathrm{m}] \\ A &: \text{導体の断面積}\ [\mathrm{m^2}] \end{aligned}



電気抵抗率が小さい材料ほど電流が流れやすく、電気抵抗率が大きい材料ほど電流が流れにくい。

一般に、金属などの導体は電気抵抗率が小さく、絶縁体は非常に大きな電気抵抗率を持つ。

半導体の電気抵抗率は導体より大きく、絶縁体より小さい。

ただし、半導体の電気抵抗率は、温度、光、添加された不純物、結晶の状態などによって大きく変化する。

1.13.2 エネルギーバンドとは

原子の中にある電子は、どのようなエネルギーでも自由に取れるわけではなく、決められたエネルギー状態に存在する。

多数の原子が集まって固体を形成すると、それぞれの原子が持つ電子のエネルギー状態が互いに影響し、電子が存在できるエネルギーの範囲が帯状に形成される。

この電子が存在できる帯状のエネルギー範囲を、エネルギーバンドという。

物質の電気伝導を考える際には、主に次の2つのエネルギーバンドが重要となる。

  • 価電子帯(Valence Band):物質を構成する原子の結合に関係する電子が主に存在するエネルギー帯
  • 伝導帯(Conduction Band):電子が物質内部を移動し、電気伝導に関与できるエネルギー帯

価電子帯と伝導帯の間には、電子が存在できないエネルギー領域がある。

この領域をバンドギャップ(Band Gap)または禁制帯という。

1.13.3 バンドギャップ

バンドギャップの大きさは、価電子帯の上端と伝導帯の下端のエネルギー差によって表される。

Eg=Ec−Ev(1.13-2)E_g=E_c-E_v \tag{1.13-2}

Eg:バンドギャップエネルギー [eV]Ec:伝導帯下端のエネルギー [eV]Ev:価電子帯上端のエネルギー [eV]\begin{aligned} E_g &: \text{バンドギャップエネルギー}\ [\mathrm{eV}] \\ E_c &: \text{伝導帯下端のエネルギー}\ [\mathrm{eV}] \\ E_v &: \text{価電子帯上端のエネルギー}\ [\mathrm{eV}] \end{aligned}



電子が価電子帯から伝導帯へ移動するためには、バンドギャップを越えるためのエネルギーが必要となる。

バンドギャップが小さいほど、電子は伝導帯へ移動しやすくなる。

反対に、バンドギャップが大きいほど、電子が伝導帯へ移動することは難しくなる。

この違いが、導体・半導体・絶縁体の電流の流れやすさに関係している。

1.13.4 エネルギーバンドによる違い

導体・半導体・絶縁体では、価電子帯、伝導帯およびバンドギャップの関係が異なる。

導体のエネルギーバンド

導体(Conductor)は、電流が流れやすい物質であり、金属が代表的な導体である。

導体では、価電子帯と伝導帯が重なっているか、電子が存在するエネルギーバンドの中に移動可能な空き状態が存在する。

そのため、外部から電界が加わると、電子は比較的容易に移動できる。

導体では、価電子帯から伝導帯へ電子を移すために大きなエネルギーを与える必要がなく、多数の電子が電気伝導に関与できる。

半導体のエネルギーバンド

半導体(Semiconductor)では、価電子帯と伝導帯の間に比較的小さなバンドギャップが存在する。

エネルギーが与えられていない状態では、価電子帯にある電子は自由に移動しにくい。

しかし、熱や光などから一定以上のエネルギーを受けると、一部の電子がバンドギャップを越えて伝導帯へ移動する。

伝導帯へ移動した電子は、外部から電界が加わると物質内部を移動し、電気伝導に関与する。

また、電子が価電子帯から伝導帯へ移動すると、価電子帯には電子が抜けた場所が残る。

この電子が抜けた状態を正孔(Hole)という。

半導体では、伝導帯にある電子と、価電子帯に生じた正孔が、電気を運ぶ電荷担体(キャリア)として働く。

絶縁体のエネルギーバンド

絶縁体(Insulator)では、価電子帯と伝導帯の間に比較的大きなバンドギャップが存在する。

そのため、通常の温度や電圧では、価電子帯にある電子が伝導帯へ移動するために必要なエネルギーを得にくい。

伝導帯へ移動できる電子が非常に少ないため、絶縁体には電流がほとんど流れない。

ただし、絶縁体であっても、非常に高い電圧が加わると、電子が急激に移動して電流が流れる場合がある。

この現象を絶縁破壊という。

1.13.5 導体・半導体・絶縁体の違い

導体・半導体・絶縁体の違いは、次のように整理できる。

  • 導体:価電子帯と伝導帯が重なっているか、電子が移動可能な空き状態があり、電流が流れやすい
  • 半導体:比較的小さなバンドギャップがあり、熱や光などのエネルギーによって電子が伝導帯へ移動できる
  • 絶縁体:比較的大きなバンドギャップがあり、通常の条件では電子が伝導帯へ移動しにくい

半導体と絶縁体は、バンドギャップの大きさだけで常に明確に区別できるわけではない。

一般に、半導体は絶縁体よりもバンドギャップが小さいが、材料の電気的性質は、バンド構造、温度、不純物、結晶状態などの影響も受ける。

図1.13-1 導体・半導体・絶縁体のエネルギーバンドの違い

図1.13-1 導体・半導体・絶縁体のエネルギーバンドの違い

図では、導体、半導体、絶縁体を横に並べ、価電子帯、伝導帯およびバンドギャップの違いを示す。

導体は価電子帯と伝導帯が重なった状態、半導体は小さなバンドギャップ、絶縁体は大きなバンドギャップとして表す。

1.13.6 代表的な材料のバンドギャップ

代表的な半導体および絶縁体のバンドギャップを次に示す。

表1.13-1 代表的な材料のバンドギャップ

材料化学式バンドギャップ
ゲルマニウムGe0.67 eV
シリコンSi1.11 eV
ヒ化ガリウムGaAs1.43 eV
硫化カドミウムCdS2.42 eV
酸化亜鉛ZnO3.37 eV
酸化アルミニウムAl₂O₃7.0 eV
二酸化ケイ素SiO₂9.0 eV



半導体と絶縁体を区別する目安として、バンドギャップが約3 eVより小さい材料を半導体、約3 eVより大きい材料を絶縁体とする場合がある。

ただし、これは絶対的な境界ではない。

例えば、酸化亜鉛は3 eVを超えるバンドギャップを持つが、一般にはワイドバンドギャップ半導体として扱われる。

したがって、導体・半導体・絶縁体の分類では、バンドギャップの数値だけでなく、実際の電気的性質も考慮する必要がある。

1.13.7 半導体の導電性が変化する理由

半導体の重要な特徴は、外部から与えられる条件によって導電性が変化することである。

温度が上昇すると、価電子帯の電子が熱エネルギーを受け、伝導帯へ移動しやすくなる。

光が照射された場合も、電子が光のエネルギーを吸収して伝導帯へ移動することがある。

さらに、純粋な半導体に少量の不純物を加えると、電子や正孔の数を変化させ、導電性を調整できる。

半導体へ意図的に不純物を加えることをドーピングという。

ドーピングによって作られる半導体には、主にn型半導体とp型半導体がある。

n型半導体とp型半導体を組み合わせることで、ダイオードやトランジスタなどの半導体素子を構成できる。

1.13.8 フェルミ準位

物質内部の電子がどのエネルギー状態を占めるかを考える際には、フェルミ準位(Fermi Level)と呼ばれるエネルギー準位が基準として用いられる。

導体・半導体・絶縁体では、エネルギーバンドに対するフェルミ準位の位置が異なる。

また、半導体では、温度や不純物の種類、キャリアの濃度などによってフェルミ準位の位置が変化する。

フェルミ準位を用いると、伝導帯に存在する電子や、価電子帯に存在する正孔の数を定量的に求められる。

まとめ

導体・半導体・絶縁体は、電気抵抗率とエネルギーバンドの構造によって、それぞれ異なる電気的性質を示す。

導体では電子が移動しやすく、電流が流れやすい。

半導体では比較的小さなバンドギャップが存在し、熱、光、ドーピングなどによって導電性を変化させることができる。

絶縁体ではバンドギャップが大きく、通常の条件では電気伝導に関与する電子がほとんど存在しない。

半導体の導電性を制御できる性質は、ダイオード、トランジスタ、発光素子、太陽電池など、さまざまな電子・電気機器に利用されている。

この記事について

参考文献

  • “Review on Charge Carrier Transport in Inorganic and Organic Semiconductors”、Seema Morab、Manickam Minakshi Sundaram、Almantas Pivrikas

(最終閲覧日:2026年10月5日)


※本記事は、上記文献を参考にしつつ、筆者の理解に基づき整理したものである。


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