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【取扱製品解説|電気・電子 第1回】サージアブソーバとは

雷や回路の開閉などによって、電気回路には短時間だけ大きな過電圧が発生することがある。この一時的な電圧変動をサージという。

サージが電源線や信号線から侵入すると、電子部品の絶縁破壊、誤動作、劣化などを引き起こすおそれがある。

サージアブソーバとは、一時的な過電圧を制限し、電気・電子機器を保護するために用いられる部品や装置の呼称である。

このうち、少なくとも一つの非線形素子を含み、サージ電圧を制限してサージ電流を分流する装置は、IECおよびJISにおいてSPD(Surge Protective Device:サージ防護デバイス)と呼ばれる。

1.1 サージアブソーバの役割

サージアブソーバは、保護対象となる回路に加わる電圧を一定の範囲に抑えたり、サージ電流を別の経路へ流したりすることで、回路へ伝わるサージの影響を低減する。

通常の使用電圧では回路への影響を小さく保ち、所定の電圧を超える過電圧が加わったときに動作する。

サージは、線間に生じるディファレンシャルモードと、電線と接地間に生じるコモンモードに分けて考えられる。このため、保護回路ではサージが侵入する経路に応じて、保護素子の接続位置を決める必要がある。

1.2 サージ保護素子の種類

サージ保護に用いられる代表的な素子には、酸化金属バリスタ、ガス放電管、TVSダイオードなどがある。

これらは、動作電圧、応答特性、処理できるサージエネルギー、静電容量などが異なる。

表1-1に、代表的なサージ保護素子の特徴を示す。

表1-1 代表的なサージ保護素子

種類略称主な特徴
酸化金属バリスタMOV非線形な電圧-電流特性を利用して過電圧を制限する
ガス放電管GDT電極間のガス放電によって導通し、大きなサージ電流を別の経路へ流す
過渡電圧抑制ダイオードTVSダイオード降伏領域を利用して過電圧をクランプする

酸化金属バリスタ

酸化金属バリスタ(Metal Oxide Varistor:MOV)は、主に酸化亜鉛などを用いた非線形抵抗素子である。

通常の使用電圧では高い抵抗を示すが、電圧が高くなると電流が急激に増加する。この特性によって、保護対象に加わる過電圧を制限する。

MOVはサージ保護回路で広く使用される一方、繰り返しサージを受けると電気的特性が変化し、保護性能や信頼性が低下することがある。

ガス放電管

ガス放電管(Gas Discharge Tube:GDT)は、封入されたガスと電極から構成される。

電極間の電界がガスの絶縁耐力を超えると放電が生じ、絶縁状態から導通状態へ移行する。これにより、大きなサージ電流を流し、並列に接続された機器へ加わる過電圧を低減する。

GDTは大きなサージ電流を流す用途に適するが、動作後に商用周波数の電流が流れ続ける続流なども考慮する必要がある。

TVSダイオード

TVSダイオード(Transient Voltage Suppressor Diode)は、所定の電圧を超えると降伏領域で電流を流し、過渡的な過電圧をクランプする半導体素子である。

TVSダイオードはMOVより低いクランプ電圧を持つものがあり、耐圧の低い半導体回路の保護に使用できる。また、ESD対策や高速I/Oの保護にも用いられる。

1.3 複数の保護素子を組み合わせる理由

各保護素子は、処理できるサージエネルギーや応答特性が異なる。そのため、一つの素子だけで保護するのではなく、複数の素子を段階的に組み合わせる場合がある。

例えば、前段のGDTで大きなサージ電流を流し、後段のTVSダイオードで残留する過電圧を速く抑える構成がある。

また、MOV、GDT、TVSダイオードなどを組み合わせる場合は、素子間のエネルギー協調が重要となる。

1.4 選定時に確認する項目

サージ保護部品は、応答特性、電流処理能力、クランプ電圧、寿命などの特性を確認して選定する。

主な確認項目は次のとおりである。

  • 通常時に加わる最大電圧
  • 動作開始電圧や降伏電圧
  • 制限電圧またはクランプ電圧
  • サージ電流耐量
  • 吸収または処理できるエネルギー
  • 応答特性
  • 静電容量
  • 漏れ電流
  • 繰り返しサージに対する耐久性
  • 使用温度や周囲環境

電源回路では、通常時の電圧や想定されるサージエネルギーを確認する必要がある。通信線や高速信号線では、静電容量が信号へ与える影響も選定条件となる。

また、保護素子の動作電圧は、通常の使用電圧では動作せず、保護対象の耐電圧を超える前にサージを制限できる範囲に設定する必要がある。

1.5 サージアブソーバの劣化

サージアブソーバは、サージエネルギーを繰り返し処理することで劣化することがある。

MOVでは、繰り返し加わる過電圧によって電圧-電流特性や基準電圧が変化する。劣化が進むと漏れ電流や発熱が増加し、保護性能が低下する可能性がある。

したがって、サージ保護では素子を設置するだけでなく、想定されるサージの大きさと回数、使用環境、故障時の挙動、劣化の監視なども含めて検討することが重要である。

まとめ

サージアブソーバは、一時的な過電圧を制限し、電気・電子機器を保護するための部品や装置である。

代表的な保護素子にはMOV、GDT、TVSダイオードがあり、それぞれ動作原理や特性が異なる。

適切なサージ保護を行うためには、通常時の電圧、サージ電流、制限電圧、応答特性、静電容量、耐久性などを確認し、用途に応じて保護素子を選定または組み合わせる必要がある。

この記事について

参考文献

  • “Laplace Transform-Based Modelling, Surge Energy Distribution, and Experimental Validation of a Supercapacitor Transient Suppressor”、Sadeeshvara Silva Thotabaddadurage
  • “Modelling of Low-Voltage Varistors’ Responses under Slow-Front Overvoltages”、Lutendo Muremi、Pitshou N. Bokoro、Wesley Doorsamy
  • “Experimental Study on The Performance of External Open-Circuit Failure Gas Discharge Tubes under Power-Frequency Follow Currents”、Hao Luほか
  • “Reliability Analysis of Transient Voltage Suppression Diodes Under Direct Current Switching Surge Stress”、Daniel van Niekerk、Johan Venter
  • “A Bibliometric and Comprehensive Review on Condition Monitoring of Metal Oxide Surge Arresters”、Tiago Gonçalves Zacarias、Wilson Cesar Sant’Ana
  • “Hardware System and Preliminary Testing of Frequency Division Multiplexing Electrical Resistivity Tomography (FDM-ERT) Instrument”、Donghai Yuほか

参考資料

  • IEC 61643-11:2025, Low-voltage surge protective devices—Part 11: Surge protective devices connected to AC low-voltage power systems—Requirements and test methods.
  • JIS C 5381-11:2014「低圧サージ防護デバイス-第11部:低圧配電システムに接続する低圧サージ防護デバイスの要求性能及び試験方法」

(最終閲覧日:2026年10月13日)


※本記事は、上記文献を参考にしつつ、筆者の理解に基づき整理したものである。


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