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【取扱製品解説|電気・電子 第2回】電力ヒューズとは

電気回路では、過負荷や短絡によって通常より大きな電流が流れることがある。このような過電流を遮断し、回路や機器を保護するために用いられる保護部品の一つが電力ヒューズである。

ヒューズは、所定の条件を超える電流によって内部のヒューズエレメントが溶断し、電流経路を開く。動作後は電流を再び流せないため、基本的に交換が必要となる。

電力変換装置であるPCS(Power Conditioning System)にも、装置の構成や保護対象に応じてヒューズが使用される。特に、パワー半導体を保護する用途では、短時間で動作するヒューズの特性が重要となる。

2.1 電力ヒューズの役割

電力ヒューズの主な役割は、過電流が発生したときに回路を遮断し、故障の影響が拡大することを抑えることである。

ヒューズは通常時には電流を流すが、過電流によってヒューズエレメントの温度が上昇し、溶断に至ると回路を開く。過電流が大きいほど、一般に溶断までの時間は短くなる。

ヒューズには、短時間で動作する速動形と、一定時間の過電流に耐える遅動形がある。遅動形は、始動時などに突入電流が生じる回路で用いられる。

2.2 基本構造と動作

密閉形の電力ヒューズは、主にヒューズエレメント、端子、絶縁筒および消弧に用いる充填材などで構成される。

ヒューズエレメントには、電流が集中して発熱しやすくなるように、断面を細くした部分が設けられることがある。エレメントの形状や材料は、温度分布と溶断時間に影響する。

過電流によってエレメントが溶融すると、その部分にアークが発生する。密閉形の限流ヒューズでは、充填材などによってアークを消弧し、故障電流を遮断する。

ヒューズの動作は、単に電流値だけで決まるものではない。通電時間、エレメントの抵抗と熱容量、周囲温度、放熱状態などが温度上昇に影響する。

2.3 時間-電流特性とI²t

ヒューズの動作特性は、電流の大きさと動作時間の関係を表す時間-電流特性によって確認できる。

定格電流に近い電流では温度上昇が緩やかであるため、溶断までに長い時間を要する場合がある。一方、大きな短絡電流ではエレメントが急速に加熱され、短時間で動作する。

ヒューズの熱的な動作を表す指標として、電流の二乗を時間で積分したI²tが用いられる。周囲への熱損失を無視できる短時間の断熱領域では、ヒューズが動作するまでのI²tはほぼ一定となる。

パワー半導体を保護する場合は、ヒューズの動作時間やI²tを、保護対象となる半導体が故障電流に耐えられる範囲と協調させる必要がある。

2.4 PCSで使用されるヒューズ

PCSは、直流と交流を変換するためにパワー半導体を使用する。装置内の短絡故障から半導体や回路を保護する手段として、高速動作するヒューズが用いられる場合がある。

IEC 60269-4は、半導体デバイスを含む装置に使用するヒューズリンクを対象としている。対象となる回路の公称電圧は、交流1,000 V以下または直流1,500 V以下である。

一方、IEC 60269-6は、太陽光発電システムのPVストリングおよびPVアレイを保護するヒューズリンクを対象としている。したがって、PV側で使用されるヒューズと、PCS内部で半導体保護に使用されるヒューズは、使用位置や保護対象を区別して考える必要がある。

また、すべてのPCSが同じ位置や方式でヒューズを使用するわけではない。実際の保護構成は、回路方式、電圧、想定される故障電流、半導体の耐量などによって異なる。

2.5 交流用と直流用

IEC 60269-1は、交流1,000 V以下または直流1,500 V以下の回路を保護する、一定以上の定格遮断容量を持つ密閉形限流ヒューズを対象としている。

交流回路と直流回路では、遮断時の電流やアークの挙動が異なる。このため、ヒューズは定格電圧だけでなく、交流用か直流用かを確認する必要がある。

特にPCSの直流回路に使用する場合は、直流回路で規定された定格と遮断性能を確認する必要がある。交流用ヒューズの定格を、そのまま直流回路へ適用できるとは限らない。

2.6 確認すべき主な特性

電力ヒューズは、回路の通常電流だけでなく、故障時の条件と保護対象の特性を踏まえて選定する必要がある。

主な確認項目は次のとおりである。

  • 定格電圧
  • 交流用または直流用の区分
  • 定格電流
  • 定格遮断容量
  • 時間-電流特性
  • I²t
  • 保護対象および適用規格
  • 周囲温度および放熱条件
  • 端子部の温度
  • 上位・下位の保護装置との協調

定格電流だけでヒューズを決めると、通常運転時の一時的な電流で不要に動作したり、故障時に保護対象より先に損傷が生じたりする可能性がある。

また、ヒューズの発熱はエレメントだけでなく、端子や周辺部の温度にも影響する。連続通電時には、盤内温度、取付状態、冷却条件なども含めて確認する必要がある。

まとめ

電力ヒューズは、過電流によってヒューズエレメントを溶断し、回路を遮断する保護部品である。

PCSでは、パワー半導体や直流・交流回路を保護するために使用される場合があるが、使用位置と目的は装置の構成によって異なる。

ヒューズを適切に使用するためには、定格電圧・定格電流・遮断容量だけでなく、時間-電流特性、I²t、交流・直流の区分、周囲温度および保護対象との協調を確認する必要がある。

この記事について

参考文献

  • “Numerical Analysis of Thermal Behaviour of DC Fuse”、Adrian Plesca
  • “Modeling the Tripping Behavior of Fuses Based on Data Sheet Characteristics and Conductor Material Properties”、Manuel Seidenath、Martin Maerz
  • “Transient Thermal Analysis of NH000 gG 100A Fuse Link Employing Finite Element Method”、Michał Szulborskiほか
  • “Circuit Breakers in Low- and Medium-Voltage DC Microgrids for Protection against Short-Circuit Electrical Faults: Evolution and Future Challenges”、Bayron Perea-Menaほか
  • “A Remedial Control for Short-Circuit Fault in NPC/H-Bridge Inverters without Redundant Component”、Sajjad Ahmadiほか

参考資料

  • IEC 60269-1:2024, Low-voltage fuses—Part 1: General requirements
  • IEC 60269-4:2024, Low-voltage fuses—Part 4: Supplementary requirements for fuse-links for the protection of semiconductor devices
  • IEC 60269-6:2010+AMD1:2021 CSV, Low-voltage fuses—Part 6: Supplementary requirements for fuse-links for the protection of solar photovoltaic energy systems

(最終閲覧日:2026年10月14日)


※本記事は、上記文献を参考にしつつ、筆者の理解に基づき整理したものである。


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