OMOGANEYA Technical Academy 〜 重金屋 技術塾 〜
電気・電子シリーズ 番外編|第1回 系統用蓄電池と電力申請
1.1 系統用蓄電池とは
系統用蓄電池とは、電力系統に接続し、電力系統から電気を充電するとともに、蓄えた電気を必要に応じて電力系統へ放電する蓄電設備である。
太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは、天候などによって発電量が変動する。一方、電力系統では、電力の需要と供給を常に一致させる必要がある。
系統用蓄電池は、電力が余っている時間帯に充電し、電力が必要となる時間帯に放電することができる。このため、再生可能エネルギーの余剰電力の吸収や電力の需給調整など、電力系統の安定運用に活用することができる。
日本では、系統用蓄電池の普及や電力システムにおける役割の拡大に伴い、法制度の整備も進められている。
2022年5月に成立した電気事業法の改正では、一定の要件を満たす蓄電用の電気工作物を用いて、小売電気事業等の用に供するための電気を放電する事業が「発電事業」に位置付けられた。
また、2022年12月からは「電気設備に関する技術基準を定める省令」において、蓄電池を設置し、充電および放電するための電気設備を備えた場所について「蓄電所」としての位置付けが設けられ、保安規制の対象として整理されている。
このように系統用蓄電池は、単に電気を蓄える設備ではなく、電力系統に接続して充放電を行う電力設備の一つとして制度上の整備が進められている。
なお、すべての系統用蓄電池が電気事業法上の「発電事業」に該当するわけではなく、設備の出力や事業形態などによって適用される規定が異なる。
本記事の筆者である株式会社マリンテクノサービス 代表取締役 前田 淳志は、2022年12月以降、系統用蓄電池の電力申請に関する相談を受け、これまで全国数百件に及ぶ接続検討申込みを支援してきた。
1.2 系統用蓄電池と空抑えの問題
系統用蓄電池の導入が急速に進む一方で、電力系統への接続をめぐって「空押さえ」が問題となっている。
系統用蓄電池を電力系統へ接続する場合、一般送配電事業者に対して接続検討申込みを行い、接続する系統への影響や必要となる系統増強工事、工事費負担金、連系までに必要となる期間などについて検討を受ける。
接続検討は、事業者が系統用蓄電池事業の事業性を判断するためにも重要な手続きである。
しかし、系統用蓄電池事業への参入が増加したことで、多数の接続検討申込みが行われるようになり、一般送配電事業者による受付や検討に時間を要することが問題となった。
資源エネルギー庁では、このような状況を踏まえ、事業化に至る見込みが不透明な接続検討申込みを減らし、事業確度の高い案件を迅速に系統連系させるための対策を進めている。
一方、「空押さえ」は接続検討申込みが多数行われることとは区別して考える必要がある。
接続検討の回答後、事業者が契約申込みを行い、連系に向けた手続きを進める段階では、系統連系のための容量が確保される場合がある。
この段階において、事業化の確度が低いにもかかわらず長期間にわたり連系予約を維持することで、後から事業を進めようとする事業者が系統へ接続しにくくなる問題が生じる。
このように、事業化が進んでいない案件によって連系予約が長期間維持される状態が、いわゆる「空押さえ」である。
こうした問題への対策として、国では接続検討および契約申込みの双方について、系統アクセス手続きの規律強化を進めている。
接続検討については、土地に関する書類の提出や、一事業者当たりの接続検討申込数に上限を設けるなど、事業確度の低い接続検討を抑制するための対策が進められている。
また、契約申込みについても、保証金や工事費負担金の支払いに関する制度の見直しなど、連系予約の空押さえを防止するための対策が進められている。
系統用蓄電池の事業化においては、単に蓄電池を設置する土地や設備を確保するだけではなく、電力系統へ接続できるかどうかが事業成立を左右する重要な要素となる。
そのため、系統用蓄電池事業を進めるうえでは、電力会社への申込みから系統連系までの「電力申請」の流れを理解することが重要となる。
1.3 系統用蓄電池の電力申請に対する当社の考え方
系統用蓄電池の急速な普及に伴い、接続検討申込みの増加や連系予約の空押さえなど、電力系統への接続をめぐるさまざまな課題が生じている。
こうした状況を受け、国や一般送配電事業者では、接続検討や契約申込みに関する制度・運用の見直しが進められている。
株式会社マリンテクノサービスでは、系統用蓄電池の電力申請を支援するにあたり、国や一般送配電事業者から公表される制度や運用を確認し、それぞれのルールに従って申請業務を行っている。
系統用蓄電池の電力申請では、接続する電圧や系統、設備構成などによって確認事項が異なるほか、制度や一般送配電事業者の運用変更によって申請時に求められる内容が変わる場合もある。
そのため当社では、公開されている資料だけでは判断が難しい事項については、必要に応じて関係機関への確認を行いながら申請を進めている。
また、複数の蓄電池メーカーおよび受電設備メーカーと情報交換を行い、製品・技術に関する情報を確認できる体制の構築を進めている。電力申請では、PCSや蓄電池、受変電設備などの仕様確認が必要となることも多いため、申請手続きだけでなく設備側の情報についても確認しながら対応している。
系統用蓄電池を取り巻く制度や系統アクセスのルールは現在も変化している。当社では、こうした制度・運用の変化や設備に関する情報を確認しながら、系統用蓄電池の電力申請を支援している。
この記事について
参考文献
・経済産業省ニュースリリース「電気事業法施行令等の一部を改正する政令が閣議決定されました」
・資源エネルギー庁「系統用蓄電池の現状と課題」第51回 系統ワーキンググループ 資料3
・資源エネルギー庁「系統用蓄電池の迅速な系統連系に向けて」第3回 次世代電力系統ワーキンググループ 資料4
・資源エネルギー庁「発電等設備における系統アクセス手続きの規律強化について」次世代電力系統ワーキンググループ
・資源エネルギー庁「系統用蓄電池をはじめとする発電等設備の迅速な系統連系に向けた対応について」次世代電力系統ワーキンググループ
この記事を書いた企業
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