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【情報理論・信号処理の基礎|第1章 通信のモデルと情報量】1.1 通信系の構成

通信とは、情報を送り、伝え、受け取ることである。

会話や文字のやり取りだけでなく、機械への指令や機械同士のデータ伝送も通信に含まれる。通信系は、情報源・送信機・通信路・受信機・受信者という役割で整理できる。

1.1.1 通信系を構成する各部の役割

通信系では、情報源から生じた通報を送信機で信号に変え、通信路を通して受信機へ送り、受信者に届ける。

表1.1-1 通信系の基本構成と役割

構成要素役割
情報源伝える情報を発生する
送信機情報源からの通報を、伝送に適した信号に変える
通信路送信信号を伝える経路となる
受信機受信信号から元の通報、またはそれに近いものを取り出す
受信者伝えられた情報を受け取る

通信路は、有線通信ではケーブル、無線通信では空間に相当する。

1.1.2 通報と信号の違い

情報源が発生する、伝えるべき内容を通報(メッセージ)という。通報には、文字の列や、時間とともに変化する音圧などがある。

一方、送信機が通報を伝送に適した形に変え、送り出すものが送信信号である。通信路を通って受信機に届いたものを受信信号という。通報と信号を区別すると、伝えたいものと、それをどのような形で運ぶかを分けて考えられる。

例えば、電話の情報源は加入者の集合として捉えられ、通報は時間とともに変化する音圧である。音声を電気信号に変えて伝える場合、送信側では音声を電流の波形に変えて送り、受信側では届いた信号から音声を取り出して、聞く人に届ける。

表1.1-2 音声を電気信号で伝える電話の例

通信系の構成要素対応するもの
情報源加入者の集合
送信機音声を電気信号に変える部分
通信路電気信号を伝える電話線など
受信機受信信号から音声を取り出す部分
受信者聞く人

この例では、送信側で生じた音声と、通信路を伝わる電気信号は、同じ物理的な形ではない。送信機と受信機は、その間の変換を担っている。

信号の性質による分類

信号を確率過程として捉える場合、離散的な確率過程を扱う通信系を離散的通信系、連続的な確率過程を扱う通信系を連続的通信系と呼ぶ。例として、前者には電信、後者には電話が挙げられる。

1.1.3 通信路と雑音

通信路を通る信号は、伝送の途中でひずんだり、雑音の影響を受けたりする。このため、受信信号が送信信号と同じになるとは限らない。

雑音を発生する源を雑音源という。通信系では、情報を伝える経路に加えて、その信号を妨げる要因も考える必要がある。

受信機の役割は、届いた信号をそのまま受信者に渡すことではなく、そこから元の通報をできるだけ取り戻すことである。通信では、情報を送る速さや費用とともに、どれだけ正確に伝えられるかが重要になる。

1.1.4 ディジタル通信系の構成

ディジタル通信では、情報をビット列として扱い、伝送のための処理を行う。

送信側と受信側の処理を分けた基本的なディジタル通信モデルでは、送信側に情報源符号化・通信路符号化・変調を置き、受信側に対応する復調・復号を置く。

表1.1-3 ディジタル通信の主な処理

順序送信側の処理目的対応する受信側の処理
1情報源符号化情報源の冗長性を減らし、効率よく表現する情報源復号
2通信路符号化雑音による誤りに備えるため、規則に従った冗長性を加える通信路復号
3変調符号化された情報を、通信路で伝送できる波形に変える復調

送信側では、情報源符号化、通信路符号化、変調の順に処理し、その信号を通信路へ送る。受信側では、復調、通信路復号、情報源復号の順に処理する。

情報源符号化と通信路符号化

情報源符号化は、情報の表現に含まれる冗長性を減らす処理である。圧縮によって、伝送するデータを効率よく表すことを目指す。

通信路符号化は、通信路の雑音に対抗するため、意図的に冗長性を加える処理である。受信側では、その規則性を利用して誤りの訂正を行う。

両者はともに符号化と呼ばれるが、目的が異なる。情報源符号化で表現を効率化し、通信路符号化で伝送時の誤りに備えるという役割分担である。

変調と復調

符号化されたビット列は、変調によって通信路で伝送できる波形に変換される。受信側では、届いた波形を復調し、続く復号処理で元のメッセージの復元を目指す。

1.1.5 通信モデルの広がり

通信の送り手と受け手は、人に限られない。誰が情報を発生し、誰が受け取るかによって、次のように捉えられる。

表1.1-4 通信の対象と例

情報の流れ例
人から人へ会話や文字による情報の伝達
人から機械へ機械を動かすための指令
機械から機械へ自動制御やデータ伝送
自然界から人・機械へ物理現象の観測

実験では、人や機械が実験装置などに働きかけ、その応答を受け取る。このような過程も、情報を送り、受け取るという広い意味で通信として捉えられる。

情報処理・記憶装置との共通点

情報を入力し、処理して出力する情報処理系にも、通信系と似た構造がある。入力装置を送信機、処理を行う本体を通信路、出力装置を受信機に対応させる見方である。

記憶装置も、書き込み、記録媒体、読み出しという構成で捉えられる。磁気テープ記憶装置では、書き込み側の装置が送信機、磁気テープが通信路、読み出し側の装置が受信機に相当する。

このように、通信系のモデルは、情報の伝達・処理・記録の仕組みを整理する際に利用できる。

まとめ

通信系は、情報源・送信機・通信路・受信機・受信者という役割で整理できる。通信路では雑音やひずみが生じるため、受信機は届いた信号から元の通報を取り出す。

基本的なディジタル通信モデルでは、情報源符号化・通信路符号化・変調と、対応する受信側の処理が用いられる。各処理の目的を区別することが、通信系の仕組みを捉える基本となる。

この記事について

参考文献

  • 『情報工学の基礎』細野敏夫 著、コロナ社
  • A Cascade Network for Blind Recognition of LDPC Codes、Xiang Zhang・Wei Zhang
  • Design and Analysis of Joint Source-Channel Code System with Fixed-Length Code、Han Bao ほか

(最終閲覧日:2026年10月18日)


※本記事は、上記文献を参考にしつつ、筆者の理解および実務上の知見に基づき整理したものである。


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